折り紙式メディアデバイス ORIME

ORIME : Origami devices that turn everyday objects into media



 折り紙の様に折り曲げたり、ハサミで切ったりすることで自由な形を作ることができる新しいデバイス「ORIME」を開発しました。 このデバイスを身の回りの物の形に加工して取り付ける付けることで、新しい機能を追加し、そのを情報を媒介するメディアに 変えることができます。現在進行中のプロジェクトで、これまでにORIMEを使ったアプリケーションとして、ORIMEに振動モーターを取り付けた 触覚提示デバイス、ORIMEをタッチセンサした入力デバイス、ORIMEを使った立体デバイス、ORIMEをぬいぐるみに取り付けてることで アニメーションやコンテンツに合わせて動くようにする(ぬいぐるみをメディア化する)事例などを作っています。
 なお、本プロジェクトは異能vation 2021年度「破壊的な挑戦部門」に採択いただき、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE) の独創的な人向け特別枠の支援を受けて開発してきました。




背景

 情報と物理世界がシームレスに繋がった世界、すなわち情報をディプレイからだけでなく、身の回りにある物から得ることができる 世界を実現したいと考えています。その実現のために、身の回りのものとデジタル情報を繋ぐ"のり"となるプラットフォームデバイス が必要となると考えいました。 さまざまな形状を持つ、身の回りのものに取り付けることができるプラットフォームを検討するにあたり、私は折り紙の性質に着目しました。 折り紙は薄く、折り曲げたり、切ったりすることで平面から立体まで、自由に形を変えることができます。 そして、誰でも簡単に使うことができます。
私は、折り紙のように誰でも簡単に加工でき、身の回りのものに取り付けることで、そのものをメディア化する(物理世界と デジタル情報の世界を繋ぎ、その物から情報を得る)ことができるプラットフォームデバイス、折り紙式メディアデバイスORIME の開発を進めています。




折り紙式メディアデバイス ORIMEの概要

    ORIMEはシート状で折り曲げたり,切ったりすることができるようにフレキシブル基板を使って製作しています。 RIMEは図1で示す複数"セル(=細胞)"で構成されています。各セルには、セルを制御するためのマイコンと出力用電極 と入力用電極で構成されいます。マイコンは。出力用電極に接続されたアクチュエータに制御信号を送ったり、入力用電極に 接続されたセンサーの値を取得したりすることができます。そのセルが複数がORIME全体に配置されているため、 折り紙式デバイスの任意の位置を動かしたり、センシングしたりすることができます。 また各セルは隣り合う上下左右のセルと接続する格子状回路でつながっています。 そのため、形状を変えるためにハサミでORIMEを切って、途中の回路が断線したとしても、残っている回路を利用して 各セルと通信することができ、切られた形でも機能し続けることができます。 各セルはシリアル通信を使って制御することができます。 また、各セルにユニークなIDを付与することで、そのIDを指定することで、セルごとの個別に御を実現しています。

ORIMEとセルの拡大


ORIMEの折り曲げる、切ることで様々な形を作ることができる。




ORIMEを使ったアプリケーション

 ORIMEを使用したアプリケーション例を説明します。本ページ上部の動画(YouTube)の動画の解説になりますので、 説明文に合わせて動画もご覧ください。


手の形の触覚デバイス

 ORIMEの各セルの出力用電極に振動モータ(偏心モータ)を取り付け、任意に位置を振動させることができるORIMEを用意しました。 この振動モータがついたORIMEを使って手の形の触覚デバイスを製作しました。各セルに振動モータをつけたORIMEをハサミを使って 切ることで、簡単に任意の形の触覚デバイスを作ることができます。手の大きさは人によって異なりますが、ORIMEを使うことで その人の手のサイズに合わせた振動デバイスを簡単に作ることができます。

ORIMEを手のひらの形に切る様子

 ORIMEの制御ソフトも開発しました。黒色の丸がORIMEの各セルに対応し、制御ソフト上の任意のセルにマウスカーソルを近づけると、 それに対応するORIMEのセルの振動強くなります。  今回製作した手の形の触覚デバイスを手袋に取り付けることを想定して作成しました。 ハサミを使って簡単に形を変えることができるため、体の任意の形に合わせた触覚デバイスを製作することも可能です。

ORIMEで製作した手の形の触覚デバイス


入力デバイス

 ORIMEを使って入力デバイスを製作しました。まずORIMEの各セルの入力用電極に導電性インクを使って文字を書きます。 文字に指で触れると、それに応じた文字をキー入力(コンピュータに文字を入力)することができます。 指が導電性インクで書いた文字に触れると、その文字が書かれたセルの入力用電極の静電容量がのみ変化することを利用して、 ORIME上の各セルをセンサーとして使用することで実現しています。

ORIMEで製作した入力デバイス


立体(球体)デバイス

 ORIMEは折り曲げる、切ることを組み合わせることにで平面だけでなく立体を作ることができます。 そのことをイメージしやすくるすため、球体のデバイスを製作しました。図は球の展開図に切ったORIMEと、 それを球体に貼って製作した球体デバイスです。通常球体を覆うようなデバイスを作ることは難しいですが、ORIMEであれば 展開図に切ることができるため、任意の立体を作ることが可能となります。

体の展開図に合わせて切ったORIMEと製作した球体デバイス


ぬいぐるみのメディア化

 ORIMEを使ってぬいぐるみをメディア化するコンテンツを製作しました。今回、セルの出力用電極に角度を制御できる サーボモータを取り付けたORIMEを用いました。ORIMEをぬいぐるみの形に切り、ぬいぐるみの腕の位置にあるサーボモータに 制御信号を送ることで、ぬいぐるみを操作することができます。今回、コンピュータ上のぬいぐるみのアニメーションの左右の腕を上げ下げすると、 ぬいぐるみの腕もそれに合わせて上下するコンテンツを製作しました。その様子を図に示しています。  ORIMEを使うことで、アニメーションやテレビ番組、ゲームに合わせて、お気に入りのぬいぐるみが踊り出したり、 ぬいぐるみを通して、遠隔地の人とのコミュニケーションツール(例えば出張中のお父さんが遠隔地からぬいぐるみを動かして、 子供とコミュニケーションを取る)ことができるようになります。  ORIMEは自由に切ることができるため、別のぬいぐるみにも適応することができます。 また、ORIMEを使うことで専用の動くぬいぐるみではなく、ずっとそばにいるお気に入りのぬいぐるみを使ってさまざまな体験を実現することができるようになります。

ORIMEを使ってぬいぐるみをメディア化した様子。アニメーションの動きに合わせて、ぬいぐるみの左右の腕が動く


ORIMEを使った折り鶴

 ORIMEは折り紙をモチーフにして開発しているデバイスのため、折り紙の最もアイコニックな折り方として、ORIMEを使った動く折り鶴を作成しました。 羽ばたく動作は電流を流すことで収縮するトキ・コーポレーション(株)製のバイオメタルを用いています。左右の羽の位置にあるセルから、バイオメタルに流す電流の量を 制御することで羽ばたく動作を実現しています。

ORIMEを使って作成した折り鶴。 (1)と(2)、ⅠとⅡを繰り返し,羽ばたく


ORIMEの提供方法

 ORIMEは折り紙のように四角形で提供する方法以外に、ホームセンターで布を長さで購入するように、用途に応じて必要な長さ分を提供する方法を検討しています。 ORIMEはデバイスではあるものの、マテリアルのように振る舞うため、マテリアル(材料)のように提供する方法を提案しています。

ORIMEの提供方法の提案。必要な長さを切って提供する。



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