カサナビ

kasanavi


『カサナビ』は目的地の方向へ傘を倒して道案内(ナビ)してくれる道具です。 ドラえもんのひみつ道具に「たずね人ステッキ」という、目的の方向へステッキを倒すひみつ道具をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
『カサナビ』は500mlペットボトルサイズのデバイスで、傘の先端に取り付けて使用します。 道に迷ったときに『カサナビ』を取り付けた傘を地面に立てます。 すると目的地の方向を指して傘が倒れます。 傘が倒れた方向へ進むことで、やがて目的地にたどり着くことができます。


背景

携帯電話、スマートフォンの普及によって、いつでも、どこでも簡単に目的地への行き方を調べることができるようになりました。 その一方で、初めて来た土地であっても、終始スマートフォンの画面を見て終わってしまうことも珍しくありません。また、スマートフォンに明るくない人は、この機能の恩恵を得ることができません。 『カサナビ』は子供の頃に誰もが一度はやったことがあるであろう傘倒しという遊び(行為)に目的地まで行くための情報を溶け込ませることで、使う人の目をスマートフォンの画面から解放し、目的地へ行くまでの行為を遊びに変えると同時に、スマートフォンを使い慣れていない人でも簡単に位置情報の恩恵を得ることができます。








以下、詳細

仕組み
図 カサナビ本体

『カサナビ』にはGPSセンサーと磁気方位センサーが内蔵されています。 GPSセンサーは地球上の位置を把握するために、磁気センサーは方角(北からの角度)を把握するために使用しています。

図 カサナビに搭載されたGPSセンサー(青色基板)と磁気方位センサー(赤色基板)

傘が地面に置かれたこと(傘の重さが『カサナビ』にかかったことをトリガーにして)、事前に登録されている目的地の位置情報と、今いる位置(GPSセンサーからの情報)と、傘が北に対して置かれた角度(磁気センサーからの情報)から、目的地の角度をリアルタイムに計算します。

図 傘が地面に置かれたことを検知するスイッチとスイッチを押す機構

目的地の方向へ傘を倒すために2つのサーボモーターを使って傘を倒しています。 カサナビの動作原理は次の動画の通りです。

カサナビの動作原理。
2つのモーターを使用し、1つが360°回転するモーター、一つは傘を倒すために地面を蹴るモータ

カサナビにはモーターが2つ内蔵されており、1つは傘を倒すためのモーターで、地面を蹴ることで傘の重心ずらして、バランスを崩し、傘を倒します。もう1つは360°回転するモーターで、傘を倒すモーターを任意の角度に回転させています。傘が倒れるまで、目的地の方向がわからない倒し方をいくつも検討した結果、この形となりました。(傘が倒れる前に傘本体が回転したりすると面白くないため。)
モーターには磁石が内蔵されているため、磁気方位センサーに影響を与えます。そのため、モーターと磁気方位センサーはできるだけ離した位置に配置しています。
ケースを含むほとんどのパーツは3DCAD(Fusion360)を使って設計し、自宅の3Dプリンタで出力しました。

図 3DCAD(fusion360)で設計したカサナビのパーツ

図 3Dプリンタで出力したパーツ

傘を差し込む部分には、水道管の接手の構造を採用しています。 ねじを締めることによってOリングがつぶれ、傘を固定することができます。 これによって、径の異なる傘であっても固定可能です。
『カサナビ』の内部は次のようになっています。 パーツをケースに固定するのではなく、パーツだけで自立動作できる構造、すなわち「内骨格構造」を採用しています。それをそのままにケース(外骨格構造)に固定しています。こうすることで、強度を高めています。

図 カサナビの内部構造

『カサナビ』が指す角度は、目的地と自分のいる位置を一直線で結んだ方向です。分かれ道であっても道順まではわかりません。 その代わりに、『カサナビ』はセンサー情報のみで目的地の方向を計算しているため、インターネットを介さないスタンドアローンなデバイスです。


試作

現在のカサナビの形になるまでに2台の試作機を製作しました。 最初の試作機は以下の動画です。 ケースは食品保存用の円筒形の容器を使用しました。 傘を倒す機構なども、サーボモーターに取り付け可能な既製品を使用しています。 またセンサー類は傘の取っ手にまとめて設置しています。



試作の結果、センサー類も含めた本体への一体化や、小型化のためにパーツをすべて1から作る必要があることがわかり、3Dプリンタを購入しました。
2台目はすべてのパーツを3Dプリンタで出力しました。360°回転するサーボモータが大型になるため、傘を倒す機構にラックアンドピニオン機構を用いることで180°回転するモーターのみで作ることを試みましたが、かえって大型化してしまったため、2台目はお蔵入りとなりました。

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図 カサナビの2台目に用いたラックアンドピニオン機構のCADデータ

図 カサナビの2台目のパーツ(3Dプリンタにより出力)

図 左から試作1台目、2台目、カサナビ(完成)


カサナビで表現したかったこと

『カサナビ』で目指した世界とは、情報が物理世界に地続きに、シームレスとに繋がった世界です。 情報というのは、スマートフォンなどの端末を使って得るのではなく、身の回りにある物に溶けてしまった世界になるといいなと思っています。人々の行う何気ない行為や物理現象の中に、情報が溶けていて、意識することなく、その恩恵を得ることができる世界です。





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